免疫細胞の記憶システムが病気から体を守る

私たちの身体は、一度かかった感染症には二度かからなかったり、あるいはかかったとしても症状が軽くて済むようになっています。

それは、体内の免疫細胞に一度感染したウイルスや細菌などの情報を記憶できる「免疫記憶」というシステムが備わっているからです。

免疫細胞はどこにある?

私たちの体をめぐる血液の成分は、96%が赤血球で1%が血小板、残りの3%が白血球ですが、骨髄で作られる白血球は「免疫細胞」とも呼ばれています。

この免疫細胞には、 顆粒球、マクロファージ、リンパ球の3種類があります。

白血球のうちの約60%を占める顆粒球(好中球・好塩基球・好酸球)は、常に体内を巡回して細菌やウィルスなどの病原体が侵入すると、それらと戦って退治します。

マクロファージは白血球の中に約5%しか存在しませんが、顆粒球が処理しきれなかった異物は何でも自分の体に中に取り込んで食べて退治するため、「大食い細胞」とも呼ばれています。

残りの35%がリンパ球と呼ばれるT細胞、B細胞、NK細胞の集まりで、免疫系の中心的な役割を担っています。
そして、その中でも免疫細胞の記憶システムにかかわっているのが、T細胞とB細胞です。

免疫記憶システムにかかわる細胞とは?

免疫記憶システムにかかわっている主な細胞は、リンパ球の一種であるT細胞とB細胞です。

T細胞には、「ヘルパーT細胞」と「キラーT細胞」の2種類があります。
ヘルパーT細胞は、マクロファージや樹状細胞から受け取った抗原の情報をもとに異物への攻撃の戦略を立て、他の免疫細胞へ指令を出します。

一方、キラーT細胞は病原体などの外敵を見つけ出して直接攻撃を行います。
B細胞はヘルパーT細胞の指令を受けて体内に入って来た異物を攻撃し、抗原と結合する抗体を作ります。

T細胞もB細胞も、異物を排除した後は消滅しますが、一部は記憶細胞(記憶ヘルパーT細胞・記憶キラーT細胞・メモリーB細胞)としてリンパ節などに長く保存されます。

記憶ヘルパーT細胞は、一度目に感染した時の病原体を記憶しているため、同じ病原体が再び入ってくると迅速に反応して免疫細胞に攻撃の司令を出します。

記憶キラーT細胞も、前回感染した時に攻撃して破壊した病原体を記憶しているため、同じ病原体が侵入して来た時には、すぐに活性化して攻撃し死滅させます。

メモリーB細胞もまた、前回と同じ病原体が侵入すると素早く抗体を作り出し、異物を攻撃します。

このような免疫細胞の記憶システムが作動することにより、私たちの体はさまざまな病原体から守られています。